<唾液のじつは>
こんにちは!今回は衛生士の石田が担当させていただきます(^▽^)/
〜唾液は血糖値安定の守り役〜
唾液には、炭水化物を分解する消化酵素のアミラーゼが含まれています。
しかし食べ物は、口の中で消化できるほど長時間とどまることなく、噛み砕かれるとすぐに食道に送られます。
実際のところは、炭水化物は十二指腸ですい液によって分解されるので、唾液のアミラーゼは消化には必要ないのです。
それなのに、なぜ唾液にアミラーゼが含まれているのでしょうか?
ところで、「パブロフの犬」と聞いて、何を思い浮かべますか?
パブロフ地方の犬?それとも、パブロフさんが飼っている犬?そんな連想はないでしょう。
いいえ、それはありなんです。
犬にベルを鳴らしてエサを与えていると、ベルを鳴らしただけで犬が唾液を分泌するようになります。
ロシアのパブロフという研究者が発見した「条件反射」という生理現象です。この現象が「パブロフの犬」と呼ばれています。
そして実験に貢献した犬たちも、誇り高きパブロフの犬なのです。
じつはこの有名な研究より前に、科学の発見に大きく役立った「パブロフの犬」がいます。
摂取した食べ物が胃に到達しないように、この犬の食道に手術を施します。
口で噛んで食道に送られた食べ物が食道から外に落ちる仕組みです。そして、胃瘻から胃液を採取できるようにします。
この実験で、摂取した食べ物が胃に到達しなくても、口で噛むだけで胃液が分泌されることを証明したのです。
しかも、肉の塊を噛むのではなく、肉のエキスを口におくだけでも消化液は分泌されました。
しかし、味のないタンパク質の塊を入れても消化液は出ません。
つまり健康な消化を行うためには、“おいしい食べ物が口を通る”という準備段階が必要なのです。
わたしたちの体を作っている細胞が生きていくためには、エネルギー源となるブドウ糖が必要です。
炭水化物は消化されてブドウ糖になり、腸から吸収されて血液に入ります(血液の中に入ったブドウ糖のことを「血糖」といいます)。
生命を維持する為には、血糖値をある一定の範囲に維持する必要があります。上昇した場合、血糖値を下げるホルモンは1つしかありません。
これを「インスリン」といい、すい臓から分泌されますが、糖が体に入ったら、すぐに分泌されなければ血糖値が上昇してしまいます。
ですが、腸で炭水化物がブドウ糖に分解され吸収されるのを待っていては遅すぎます。
そこで口を感知し、その情報がすぐさますい臓に送られ、インスリン分泌の準備をします。
ところが口では炭水化物を感知できません。
じつは唾液のアミラーゼが炭水化物を分解することで、味細胞が感知できるようになります。
これも唾液の役割の1つです。
(参考文献 nico. 2024.8月号)